雛壇アーキテクチャー

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『はじめの一歩』大原画展に打ちのめされて泣きそうになった

f:id:hinadanarchitecture:20191230151340j:image■今でも読み続けている漫画

このエントリを書こうとして自らを省みていたのだが、子どもの頃から継続して今でも単行本を買って読み続けている漫画、というものは意外と少ない。

自分自身が30代半ばという中年のスタート地点に立ったあたりということもあり、そもそも子どものころから作品が続いているものが少ないのだ。小学生くらいまでに始まって今も続いているもの、としては『ジョジョの奇妙な冒険』『ゴルゴ13』あたりがパッと出てきた。ジョジョについては6部まリアルタイムで読んでいた。結果的には『Steel Ball Run』以降は読んでおらず、ジョジョについては思うところが色々とあるのだが、話が逸れるので別エントリで書きたいと思う。

そもそも続いている作品があまりないのだから、さらに読み続けているという条件が付くと更に絞られてしまうが、私にとって『はじめの一歩』はそれらの条件を充たす唯一の作品だ。

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 ■ハマっていた少年時代

『はじめの一歩』は小学3年生頃に兄が購入していた単行本を手に取って読み始め、東日本新人王の決勝戦(一歩 vs 間柴戦)で当時胸を熱くしていたのをとてもよく覚えている。

当時は週刊少年ジャンプで『ドラゴンボールZ』『幽遊白書』、さらに数年後には『るろうに剣心』『スラムダンク』などが学校では話題に上がっていたし、もちろんそれらの作品も単行本を買って読み込んでいた。当時通っていた小学校では主にそれらのジャンプ漫画の話が出ない日はなかったが、『はじめの一歩』はさほど小学校で話題に上がることはなかった。

それでも、私はそれらのジャンプ作品と同じように『はじめの一歩』を読み続けていた。いや、正確にいうと「一歩みたいなリアルなボクシング漫画のおもしろさを分かってるオレってオトナやなー」という陶酔が頭の中のどこかにあったような印象もある。当時の少年マガジンはヤンキー漫画のオンパレードで、小学生が読むにはやや大人な内容が多かったのだ。

実際、中学の終わりくらいで鷹村 vs ブライアンホークの試合が盛り上がっていたときには友人たちと毎週学校で話の展開に一喜一憂していたが、そのときは「君たち、やっとオレに追い付いたな」という想いが言語化できないほど微かに頭の片隅にあったような気がする。

そうした謎の自己陶酔を抱えたまま『はじめの一歩』にハマっていた。鷹村 vs ブライアンホーク近辺から読み始めた人たちとは愛情の度合いが違うのだ、という(今となっては)いけ好かないタチの悪いオタク的姿勢だったが、どの巻のどのあたりにどんなエピソードがあった、誰がどんなセリフを言っていた、ということも容易に引き出すことができるほど読み込んでいた。

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ちなみに、はじめの一歩の単行本は全部揃えているが、60巻を過ぎた頃くらいで実家を出て、それ以降ほぼ帰っていないので初期の単行本は長らく目にしていない。

 

■大原画展に行ってきた

そうやって子どもの頃から何度となく読んできた『はじめの一歩』の大原画展に行ってきた。
正直なところ、生原稿を見ることで自分自身がどういうことを感じるのか全く分からない状態だったものの、これまでの人生で最も長く読み続けている作品の節目イベントだし、行ってみよう、という気軽なノリで行くことにした。

会場には単行本の表紙を飾ったイラストと、第1話、一歩 vs 千堂の日本タイトル戦、木村 vs 間柴、鷹村 vs ブライアンホーク戦に加え、最新話の原稿が展示されていた。

展示スペースに入ると、単行本の表紙を飾ったイラストが1巻のものから5巻くらいまでが目に入った。久々に見た連載初期の表紙イラストの懐かしさがこみ上げると同時に、本物のイラストが持つ迫力で一気に心を掴まれた。ちなみに単行本の表紙イラストは125巻くらいまでがズラッと並んでいたが、私は初期の頃のイラストがとても好きだったので初期の10巻くらいまでのイラストが遠目に見えただけで完全にハートはアイアンクローを食らっていた。

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■本物の持つ破壊力

そして、展示されている第1話の原稿を見て非常に感動したのだが、そのこと自体に私自身ものすごく驚いた。これまでに何度も何度も読んだ話だったし、何なら原画展に行く前にも文庫本の1巻で改めて何度か読んだ話だったことから、無意識のうちに第1話のすべてを理解した気になっていたのかもしれないが、生原稿を読んだことで幕ノ内一歩という少年が変わろうという気持ちをどれほど強く抱いていたのかを全く理解していなかったのだなと思い知らされたのだ。

単行本で読んだときも、いじめられっ子が必死に変わろうとしている姿に心を打たれたつもりだったが、生原稿を見たときは心を打たれたというよりデンプシーロールを食らったような感じだった。別の表現をすると、単行本で読んだときの感動がガード越しのパンチだとすると、生原稿だとガードがなくクリーンヒットのパンチだったという印象だろうか。

それは単行本よりも大きい原稿サイズによるものだったり、森川先生はじめ製作に携わったスタッフの皆さんの息遣いを感じさせるペン跡などによるものだったりするのだと思うが、それらを備えた生原稿の破壊力を知らないまま本物に出会ってしまい予想しなかった感動に浸ることができた。紙の上でしか見たことのなかった幕ノ内一歩少年のジャブの練習が、生の幕ノ内一歩少年の猛練習を見た気分になれたのだ。思わず「頑張れ!!」と拳を握りしめてしまった。

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ラルルアパルルオーザ改めLALLAPALOOZAの千堂との試合などその他の原稿も同様で、まるで目の前にリングがあってそこで試合が繰り広げられているような迫力だったが、第1話の衝撃は当分忘れられそうにない。

 

なお、一歩も非常に好きなくキャラクターなのだが、もし私の最推しキャラはヴォルグ・ザンギエフであり、一歩エピソードの生原稿で泣きそうになってしまうほどだったことからすると、ヴォルグの試合の生原稿が展示されていたらどれほどの感情を抱くのか想像もできない。

 

ちなみに最も心揺さぶられたのは第一話で約束の葉っぱ掴みで挫けそうになりながらも「生まれ変わるんだ!」と自らを奮い立たせるページだったが、感動のあまり写真を撮り損ねた。後からジワジワ後悔が来てリバーブローを食らった気分。

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■めちゃくちゃお勧めできる

一歩を読んだことがない人も読んだことがある人にも強くお勧めできる展示会だったのでこのエントリを書いてみた。

いざ『はじめの一歩』について書き始めると次から次へと思うところが沸いて出てきて文章を書くのに1週間くらいかけてしまい原画展が終わる直前になってしまったことが悔やまれる。


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でもオススメできる原画展なので少しでも興味のある人は是非とも行っていただきたい。

http://ippo.gengaten.com/

ちなみに製本された段階では分からないパースの線(?)とか細かな仕事ぶりも垣間見えて最高だった。

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鷹村vsホーク戦はとにかく迫力が桁違いだった。

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また生原稿見れる機会があったら是非行きたい。