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仮面ライダーグリスを観てきたよ(7週間くらい前に)

仮面ライダーグリスを観てきたよ(3週間前に)

映画をみたので思ったことを書いてみる。決して映画評ではない。
なお、観てから既に3週間程度経過しているので遅きに失した感はあるが、所詮は一観客の感想だし仕事として書くわけではないので気にしないこととする。
観た作品は「ビルドNEW WORLD 仮面ライダーグリス」。TVシリーズ仮面ライダービルド」の1話冒頭を1分見てハマると直観し、その予感通りに無事TV本放送を完走。劇場版もフォロー。シリーズを締めくくるべく公開翌日に劇場へ向かった。
結論としては100点(100点満点)だった。
採点しているあたり映画評じゃないかと突っ込まれそうだが、採点というより観客として感じたことや満足度を定量的に表現するための一つの手段として大目に見て欲しい。

ただ、結論として満点の映画だったわけだが、仮面ライダービルドシリーズのファンとして気になる点はあった。そこがモヤモヤするので文字にして整理しておきたい。
書いたタイミングもだいぶ遅く、そもそも存在そのものが怪しいブログの記事ではあるが万が一関係者の方が何かの間違いでエゴサの限りを尽くしてこの記事にたどり着いた場合は貴重な時間を無駄にして本当に申し訳ないとしか言いようがないが、変身ベルトやフルボトル、劇場版など可能な限りの課金を楽しんできたうえでビルドファンであり続けているキモヲタの戯言として読み流して欲しい。

以下ネタバレ注意。長文にも注意。

■ストーリー概要
ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ後の世界の話。主人公はカズミンこと猿渡一海。前作「仮面ライダークローズ」にて旧世界の記憶を取り戻した人体実験の被験者 浦賀がテロ組織であるダウンフォールとともに科学の力で世界を征服しようとライダーシステムの強奪を図る。
ダウンフォールのテロリストたちはネビュラガスを濃縮したより強力なファントムリキッドを用いてファントムクラッシャーに、浦賀はメタルビルド(ハザードトリガーを活用していて俺得だった)に変身し、体内にネビュラガス成分しかない戦兎たちは変身出来ない状態に陥り、変身できるのはカズミンと三羽ガラスだけとなる中、みーたんが攫われ、戦いが幕を開ける。

以下、更にネタバレ注意。

 


■なぜカズミンたちだけが変身できるのか?
・まず、なぜカズミンと三羽ガラスだけが変身できるのか、という点だが、その理由を説明するには前提となるストーリーの説明が必要である。ごくかいつまんで説明すると、次のとおりである。

1.カズミンがみーたんに振られる
   ↓
2.三羽ガラスとともに傷心旅行に(ゴムボートで)旅立つ
   ↓
3.無事遭難し、無人島に漂着する
   ↓
4.無人島に温泉があり、間欠泉で噴き出したお湯を全員揃って口にしてしまう
   ↓
5.奮起して自力で帰ってくる

なお、上記の1~5までのストーリーは同時上映の「ドルヲタ、推しと付き合うってよ」の内容でもある。
ちなみに本編でテロ組織のダウンフォールが首相官邸に現れて玄さん(ヒゲなし)を手籠めにしていたのは4~5の間であると思われた。

ここで「なぜカズミンたちだけが変身できる?」という話に戻ると、その理由は4で飲みこんだお湯である。このお湯の正体はネビュラガスを濃縮しまくったファントムリキッドで、人体に取り込むことでネビュラガスとは比較にならないレベルのハザードレベル向上をもたらすことになるらしい。
副作用としては高熱が出て苦しんだという話が出ていたが、それらの副作用は無事乗り越えたとのことだった。その程度の副作用であればカズミンと三羽ガラスが励ましあえばどうということはないであろう。なんの問題もない。
TVシリーズ本編では玄さん&カズミンが極限までネビュラガスを取り込む施術を受けてかなり苦しんでいたが、それもしれっと乗り切るくらいなのでネビュラガスを濃縮しまくったファントムリキッドを取り込んだとしても三羽ガラスがいれば乗り切ることなどたやすいのだ。北都の絆を信じろ。

そういう北都の絆でファントムリキッドを無事体内に取り込んだ北都メンバーはなんやかんやでネビュラガスを抜こうとする程度の敵の攻撃にも全く影響を受けず変身ができたというわけだ。

ここはファンなら細かいことを言わず北都の絆で苦しみを乗り越えたということが容易に想像できる。言葉による説明など一切不要なのだ。そう、ビルドファンならね。

■戦兎たちがファントムリキッドを無人島まで探しに行かなかったのはなぜか?
しかし、である。戦兎たちがネビュラガスを抜かれ、戦うためにはファントムリキッドが必要だとなったとき、どうして例の無人島に調達に行かなかったのだろうか?三羽ガラスの命を脅かしてファントムリキッドを抜くことと、ゴムボートで往復できる程度の距離にあると思われる無人島をカズミンに聞いて探すこと、それは桐生戦兎の科学力をもってすればあっという間に場所の特定&採取のための発明もお茶の子さいさいであろう。
これはストーリーの綻びであろうか?
否、断じて違う。
「三羽ガラスがかわいそうだ!無人島探そうぜ!」と思った人は冷静になって欲しい。ファントムリキッドの調達を三羽ガラス経由にするか無人島直送にするかを判断しているのはわれらが桐生戦兎なのだ。天才なのである。

天才・桐生戦兎は凡人とは違って近視眼的なものの見方はしない。戦いの収束までを見据えた俯瞰的な分析を瞬時のうちにしてしまっていたのだ。
まず、ファントムリキッドを調達する手段として無人島直送を選べば三羽ガラスの命をこれ以上危険にさらすことはないであろう。
そうなると、三羽ガラスをダシにしてファントムリキッド成分を抽出したとしても彼らの命が危険にさらされないことを桐生戦兎は分かっていたのだろうか?当然だが分かっていたのである。
そうでもない限り、我らがヒーロー桐生戦兎は三羽ガラスからファントムリキッドを抜くという選択をしないからだ。ここに納得できないようであればTVシリーズからやり直そう。

さて、ではなぜ分かっていたのか?愚問にもほどがあるが、一応回答しておくと「天才
だから」だ。彼の異名は悪魔の天才科学者だ。つまり悪魔的な知能の高さを備えた人物なのである。一度手合わせしたファントムクラッシャーの分析や、何より本編でネビュラガスを注入され過ぎて消えていった北都メンたちのことを「もし同じことが起きたら」という目線で考えなかったはずがないのだ。似たような状況下でどのような条件であれば助かるのか、など考えつくしていたほずだ。ただVシネで描かれなかったに過ぎない。
悪魔的な天才が考えつくしたテーマなので、なんやかんやで三羽ガラスは助かるじゃん、ということが戦兎には分かっていたのである。

■それならそう言ってくれ問題
そうなると次に出てくる疑問は「それならそうと言ってくれないのは何故なのか?」である。率直に申し上げてこれぞ愚問の中の愚問であるが、回答を書いておく。カズミンを本気で戦わせるためである。

ファンの皆さんは自分の足の裏よりもよくご存知のとおり、北都メンの絆たるやまさしく家族である。カズミンの性格としても家族が傷つくこと、ましてや命を奪われることは絶対に許されないことなのだ。

このカズミンの性格をある意味利用してカズミンの戦闘力を最大限上げようというドラゴンボール孫悟空が悟飯に向けた畜生な考えが戦兎にはあったのだろう。この目論見を実現させるためには三羽ガラスの命が実は危なくないことを決してカズミンに知られるわけにはいかない。

「敵を欺くにはまず味方から」である。筋肉バカの万丈にはもちろん知られるわけにはいかないのだが、映画としては観客にも知られるわけにはいかない。そこで戦兎は「三羽ガラスが助かる可能性は…低い」という内容のセリフを言う。それもかなり深刻そうに。
ただ、このセリフは我々観客に向けたものでもある。「えっ、やっぱり三羽ガラスだし、みんな死ぬのかな?」「いやいやでも『助かる可能性低い』って言ってるしゼロではない…?」その絶妙なボーダーラインに我々を整列させてラストでまとめてハグするためのセリフなのだ。

さすがは新世界を創造したときにメタ視点でナレーションを作れる天才である。もはや作中世界では神と言っても過言ではない。エボルトが帰ってきても返り討ちは容易だろう。

このように万丈どころか観客のほとんどを欺くことで無事カズミンをも欺き、カズミンの戦闘力を最大限まで高めることに成功するのである。悪魔の科学者め。

■みーたん保護になかなか向かわないカズミン問題
上記のポイント以外に、上映中、実は個人的に一点だけ引っかかっていたポイントがあった。
それはみーたんが狙われそうだから保護に言ってくれと戦兎から頼まれたカズミンがなかなか(というか頑なに)動かないのである。そう、冒頭でフラれていたからだ。
ここは流石にシャレにならない状況なのでフラれたとかどうでもよく、みーたんに一瞬嫌われたとしても助けに行くのがカズミンというキャラだと思っていたので、やや理解が追い付かなかった。
しかし、冷静に考えると、カズミンは助けに行かなかったわけではない。迷いに迷って助けに行くのが遅くなっただけだ。振った相手(カズミン)がいきなり助けにくるみーたんの気持ちを最大限慮って初動が遅れたに過ぎない。1ミリの問題もない。

なぜ上映中にその理解がスッとできなかったのか悔やまれる程度には心に引っかかりがあったが、こうして文字にすることで無事整理ができた。

■劇場(品川Tジョイ)の様子
以上のように、一見引っかかりそうなポイントも冷静に考えると何の問題もなくクリアになる非常にいい映画だった。
これに加え、戦兎、万丈、玄さん(ヒゲなし)がそれぞれ最強フォームに、しかもサイボーグ内海もマッドローグに変身して戦うという最高のお祭りが描かれている。ファン的には完璧だ。
実際、劇場で観賞することで、会場全体が「あぁ…(悲しみ)」とか「おぉ!(歓喜)」とか「草」とか感情を動かしながら観ていることが実感でき、それ自体が良い映画体験だった。休みの日もたまには家から出てみるものだ。

「ドルヲタ、推しと付き合うってよ」の最中は「草」、三羽ガラスのドッグタグを無言で手渡されたカズミンが悲しむ場面では「あぁ…(悲しみ)」、全員の変身シーンでは「おぉ!(歓喜)」といった具合だ。ドッグタグを手渡すシーンでは隣の人は普通に泣いていた。

ラストでは扱いがアレになりがちな玄さんもしっかり幸せになっており、北都メンもハッピーだしでビルドの正当な続編がみんなハッピーな形で終了となったのが大満足である。

そして何より、劇場には小さなお子様も多数来場していた。そもそもお子様向けコンテンツなのだから当たり前なのだが、1年前にTVで完結したシリーズの映画に来てくれていて、劇中のギャグシーンでもしっかり笑っていたりした点などはとても感動的ですらあった。
一ファンとしてビルドが多くの人に愛されているという実感を得る経験ができたことが満足度を決定的に高めることとなった。

ライダー映画は劇場の一体感は強い方だとは思うが、本作はライダー映画の中でもそれが強かったのではないだろうか。

そういうわけで完璧な映画体験&ビルドの締め括りだった。ビルドファンは未来永劫幸せに眠れるだろう。